2007年8月21日火曜日

プロジェクト開始まで

ザンビアの農村地域で保健プロジェクトを開始すべく、2006年4月より田淵がザンビアにて行った現地調査をもとに提案した内容が、JICA(国際協力機構)の「平成18年度第1回草の根技術協力事業パートナー型」に採択されました。この事業は、日本のNGOなどの団体がこれまでに培ってきた経験や技術を活かして企画した途上国への協力活動を、JICAが支援し、共同で実施するというものです。つまり、日本国民の税金がザンビア国民の生活向上のために庶民レベルで直接使われることになります。
 採択内定後も追加調査が必要になったり、ザンビア保健省と合意文書を交わさなければならなかったため、少し時間がかかってしまいましたがやっと、本日より3年間の予定でプロジェクトが正式に開始されました。これまで協力してくださった皆さんに感謝するとともに、これからも引き続きご支援のほどお願いいたします。  当面はTICOスタッフとして田淵がザンビアに駐在して、プロジェクトの核となるヘルスポストの建設を主に進めていく予定です。

プロジェクトのあらまし

 ザンビアの首都ルサカから100キロほど北に位置するチボンボ郡モンボシ地域は、23の村からなる、人口約7,000人の農村です。村人は主食のトウモロコシやわずかな野菜を育て、畑の間に点在する家に住んで、日本人の感覚からすると自給自足に近い生活を送っています。
 こんな村で、健康で暮らしていくには何が必要でしょうか。病気になったときのために何が必要でしょうか。ザンビアの農村でいちばん病気の危険にさらされている、幼い子どもたちとそれを育てるお母さんについて考えてみましょう。
 ある日、村の子どもが熱を出したとします。この子のお母さんは、解熱薬がこの世にあることは知っていますので、薬を与えたいと思いました。でも、村では診療所どころか薬局もありませんから、薬は手に入りません。お母さんは様子を見るしかありませんでした。
 翌日になっても熱が下がらないので、マラリアではないかと心配になってきました。診療所に行けば、マラリアの薬もあるはずです(在庫があれば)。何より診察してもらえれば、安心することができます(ヘルスセンターと呼ばれる診療所には、医師はいませんが、一定の訓練を受けた准医師・看護師が診療を行っています)。
 お母さんは子どもを診療所に連れて行こうと思いました。しかし、最寄りの診療所は30キロも離れた町チサンバまでありません。日に数便の乗合自動車(ミニバス)はありますが、運賃が高くてとても払えません。お母さんは今日も家で様子を見るこf とにしました。

やりたいこと1
ヘルスポスト(簡易診療所)を建てて、必要最低限の診察がモンボシ地域で受けられるようにしたい。

 次の日になっても容態は良くなりません。子どもは昨日よりぐったりしていて、元気がありません。何とかお金を借りてミニバス代を工面して、やっと診療所で診察を受けることができました。やはりマラリアだったようで、脱水もひどく、入院することになってしまいました。
 マラリアにならないためには蚊に刺されないことが大事とは聞いていましたが、蚊帳も持っていませんし、具体的にどう予防すればいいのか誰も教えてくれません。

やりたいこと2
ヘルスポストを中心にして、村人自身が村の健康を守るための活動を展開できるようにする。村人の有志から、その役割を担う人材(コミュニティ・ヘルス・ワーカー)を養成する。

 診察した看護師からは、栄養失調もあると言われました。歳の割に体重が少ないそうです。そういえば生後1年くらいまでは、月に一度の診療所からの出張検診で体重測定をしていましたが、最近は畑が忙しくて受けていなかったので、栄養失調にも気付きませんでした。
 薬がよく効いて、何とかマラリアからは快復できました。退院のときに看護師さんから、栄養のある食べ物をもっと与えるように言われました。でも、お金もないし、どんな食べ物がいいのかはよく知りません。
 帰宅してからは、日々の暮らしが忙しく、次また病気になったときのことまでは考える暇もありません。

やりたいこと3
コミュニティ・ヘルス・ワーカーが、健康教室を開いたり、訪問指導したりして、乳幼児をもつ母親が基本的な保健に関する知識を得られるようにする。

やりたいこと4
村人の中から栄養改善のリーダーとなる人を育てて、栄養教室を開いたり訪問指導したりして、乳幼児の栄養状態が改善する。

 このように、乳幼児とお母さんをターゲットにした活動を展開することで、効果的に地域の健康を最低限保障できるとTICOは期待しています。

まえがき

 TICOでは、2002年にアフリカ南部を襲った干ばつをきっかけに、新しい農村開発のコンセプトを導入しました。ザンビアの農村の人たちが自立した幸せを得るためには、農業 Agriculture・水 Water・保健 Health・教育 Education の各分野について包括的に開発されることが必要だと考えたのです。各分野の頭文字を取って “WAHE パッケージ” と名付け、これまで活動を展開してきました。
 保健分野では初めての本格的なプロジェクトとして、2007年8月から3年間の予定で『チボンボ郡農村地域プライマリーヘルスケア・プロジェクト』を実施中です。なお当プロジェクトはJICA(国際協力機構)より『草の根技術協力事業(草の根パートナー型)』として委託を受け、TICOが実施しています。
 このページを通じて、プロジェクトの日々の歩みを皆さんと共有したいと思っています。ご意見・ご感想もぜひお寄せ下さい。